原田のゴミタメ。

私が語ることは、すべて接頭に「私にとって」が与えられねばならない。我儘で、自分勝手で、醜く幼い私の誇大妄想。私的な論理の飛躍は決して万人に敷衍されてはならないが、万人が私の妄想を否定したとき、もはや私には生きる必要がないと思われる。せつに、そう思うのである。

Technocracy

モラリストどもは揶揄を続けた。夥しい数の作家、学者、人文主義者、知識人がそれに続いた。山のような罵倒の文句が生産され、豪雨のような風刺画が世に溢れた。表現は皮肉が激烈になるほどに研ぎ澄まされ、批評は人を刺し貫くほどになって賞賛された。尽き…

脆い部屋

「ん?」 男はその無音の箱に手をかけようとしたところで、始終を見守っていた機械化従者から静止を受けた。 「その箱に手をかけるのはどうかご遠慮願います。それは、全く倫理的に禁止されております」 「俺がこの箱を撫でるだけのことに、一体何の問題があ…

自我とぎこちなさ

『現象学という思考』の第5章「自我」を読んでいて考えたことを記しておく。 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016126/ 本書は、私たちの日常の経験に照らしながら、現象学の概念を紹介していく構成となっている。 その第5章「自我」では、以…

自己を知れという要請について

「己を知ること」、少なくとも「自己を知ろうとすること」は確かに重要だ。無意味ではない。しかし、これほど答えを「確定」させることの虚しいテーマも他にない。 だってそうだろう。一体我々は何のために己を知ろうとするのだろうか。おそらく自発的に「己…

ある恐れ

何か人種差別的な考えや主張をしている人々に対して、毅然と「レイシスト!」と糾弾する人たち、そして最近は、人種差別的な人々の言説や振る舞いを、揶揄や皮肉、嘲笑を交えて「レイシスト」と指摘しているような人たち。 もちろん、彼ら彼女らが「レイシス…

M園長の笑顔

先日、非常に痛ましい事件が報道された。 幼稚園の送迎バスに取り残された園児が、熱中症で亡くなったというのである。 その後、事態を受けて園の会見が開かれたのだが、この会見がまた大きな波紋を生んだ。 会見の終了に際して、当事者であるそのM園長が、…

正当化された差別

差別というものがある。辞典で軽く調べたところによると、それはおよそ全人類平等の理念を前提する限りで、他のいかなる点から見ても不当な行為であるとされている。そしてまたその定義用法は古今東西津々浦々に多様であり、端的に言えば、どう足掻いても人…

呪われた個人——消極的差別主義者の素描——

私はここに、ある個人のありようを記述したい。 すなわちそれは「消極的差別主義者」とでもいうべき個人の在り方だ。 それは、反差別の嵐がかつてないほどに吹き荒れる現代にあって、確実に存在し(少なくとも1人いる)、苦悩しているであろう存在についての…

日記 21/11/10

私はこれから馬鹿げた話をする。 日常で感じたふとした不安を、たまたま目に入ったネットニュースと混交させて、陰謀論じみた被害妄想じみた疑問の表明を行い、個人的な信条を記述する。 これはきっと、私が思う以上に人の好むものではないのだろう。なぜな…

卑屈な自己認識

あらゆる穿った見解、呪詛的否定、風刺と皮肉は、それらが自身になんらかの絶対的な正当性を見出し始めたあたりから、単なる(というよりは厄介な、対話不可能な)陰謀論に堕していく。 およそ徹底的でない人間、自身の信仰を極限まで実践することのできない…

意志の研究(断片①)—ある怪物の誕生—

これまで存在を規定していた「芯」のようなものがすっかり抜け落ちたような、あるいはたんてきに憑き物が落ちたような有様で、彼は窓際の席に腰掛けていた。 声をかけると、彼は力なく微笑んで、痩せ細った腕を振って私を席に誘った。 窓の外は昼間にかけて…

こうなってしまったらもうどうにもならないこと。

「昨日、非常に恐ろしい映画を観たんだ。銃を乱射する人間が突然現れて、周りの人間は悲鳴を挙げながら逃げ惑う。幾人かは物陰に隠れて一時的に難を逃れるのだけど、逃げ遅れた人や隠れ損ねた人が、命乞いをしながら撃ち殺されていく様を目撃するんだ」 「そ…

教室棟の手記—自己を肥大させましょう—

自己とはそもそも肥大化するものではないかしら? 肥大する自己はしょっちゅう惨めな病理と見なされるけれど、我々が生きる「日常」なるものはそもそもそうした「肥大化した自己」なしには成り立ちえないのではないか。 「自己」が幻想であるという話はとり…

ある凡庸な書簡(所感)

これは先程の議論に対するぼくの考えだ。 もっとも、きみがきみの価値観・前提に従ってものごとを判断する限り、おそらくは未熟者の屁理屈としか映らないと思う。だから、見るに堪えないのなら、悲しいことだが、以降無視していただいて構わない。 ただ、い…

ヘルドとハインの実験(仮)

memo さて、私は確かに完璧な方法で精神を確立する方法を見出した。 私の認識、すなわち自我、私という感覚、それは単に私の脳髄、この頭の中における一切であり、だからこそ、私は極限までの精神体となって、めくるめく幻惑の世界を、まさに精神として現実…

『ソクラテスの弁明』を読んで

先週か、あるいは先々週か、試験勉強の合間に『ソクラテスの弁明』を読んだ。 世界の大思想シリーズに収録されているもので、長編『国家』と短編『クリトン』に挟まれる形で一冊のハードカバーに収まっているやつだ。 扉を開けてすぐ始まる大長編『国家』と…

さあ永遠なる充実への飛翔を

さあ永遠なる充実への飛翔を 1 大学2年の夏の終り、私は地方に棲まう伯父の元を訪ねることになった。母の年の離れた兄にあたる伯父は、一族、特に5年ほど前に亡くなった祖父との折り合いが悪く、その葬式にも姿を見せなかった。多浪の末にやっと進学し、…

memo日記。

「例えばさ、ある男子学生の前で、一人の女子学生の実験予習ノートが褒められたりするわけだ。TAさんなんかが集まって、へぇ、すごいとか囃すんだね。 「じっさい、その出来は立派なんだ。横目に見ただけでもよく考えて作りこまれていて、それなりの時間と労…

老人とぬいぐるみ

その痩せた老人は一人であったが、独りではなかった。 彼は旅好きで、昨日は東で明日は西といった具合に、あてどなく国々を巡ったものだ。 そんな老人は、常に一人であったが、独りではなかったのである。 彼の旅は、いつもぬいぐるみとともにあった。 故郷…

memomemo

「友達と飲み歩いたり、女を抱いたり、笑ったりするのは構わないよ。でもそれは「それなり」な人間の特権だと思うんだ。絶え間ない努力によってずば抜けて勉強のできる奴がいたとしたら、そいつこそがそういう幸福や歓楽を堂々と享受すべきで、そうでない下…

愚者

序 私には、憧れる人があった。 その憧れは、一個の灯として、私を生かしていたのだ。 1 私がまだ学を知らず、生まれ育った小さな農村で、祖母の手伝いをしていた頃の話である。私を慈しみでもって育ててくれた祖母は領主さまの屋敷に仕えており、そのかど…

みんなで笑おう。

悪とは何か。 それは害意の総称である。 悪の定義が何であれ、そこには必ず他者が存在する。 孤独者にとって究極的な悪など存在しえず、悪はただ他者の想起によって起る。 一体の個人に対する害意であったり、他者の集団に対する背信であったり。 ただ独り居…

個人的試論。

私が、一般に「悪い」と言われていることを人にする。 つまりは、他人に危害を加える。 すると私は(当人、あるいは関係者から)憎まれるだろう。 私は同じように危害を加えられるかも知れない。 あるいは、憎しみでもって、より苛烈な復讐を被るかも知れな…

悪。

悪とはなんだ? 悪とは闇だ。希望の闇だ。 薄暗がりで蹲る、傷ついた人間を包み込む、希望の闇だ。 そのままでいいんだよ。と。変わらなくても、苦しまなくてもいいんだよ。と。 一切を、ありのままを包み込む、希望の闇だ。 歪なものも、醜いものも、弱く劣…

妄言醜

妄言的な思い付きの置き場。 思いついたら書き足してゆきます。 作品と作者は切り離して考えねばならない。 およそ創作物は100%の嘘八百であるということを、常に自覚しなければならない。 そうしないと、心がもたない。 25/07/2020 いかに不健全なものであ…

願い。

モラルや道徳を語る人間は、徹底的に、殺さなければならない。 私は、一つの誠実さでもって、これを真に確信する。 道徳、あの幾人もの夢を、人生を、かけがえのないものを、したり顔で、問答無用で踏みにじった、最大級の悪徳! 健全、呪いのように価値観に…

ねがい。

世界が、すべて私だけを慮ってくれたら、どんなに良いだろう! どんなに素晴らしいだろう! どんなにおもしろいだろう! 鬱的な、苦しい、違和感のただなかで、ただただこう思う。 よくばっちゃいけないんだと、教わった。 みんなにやさしくしなさい、ひとを…

悪魔。

悪魔。 「本は酒のようなものです。いけるひとと、いけないひとがいる。得られる感覚は天に昇るようであったりしますが、きっちり害毒であったりする。体力や時間の浪費については、言うまでもないでしょう。ああ、あと、依存性もありますね」「『本は心の栄…

醜人アグリウスの転落

醜人アグリウスの転落 憎むべき醜人アグリウスは言わずもがな、孤独である。それは醜き罪人には当然の仕打ちであり、誰も彼を顧みることはなかった。罪、それは醜いこと。彼は人並みに苦しみ、人並みに絶望し、人並みに腐った。そう思いたかったし、そう思っ…

孤独者ロネリネスの見聞

孤独者ロネリネスの見聞 我らが孤独者ロネリネスは、名前の通り孤独である。 彼は人並みに孤独に苦しみ、人並みに絶望し、人並みに腐った。 ある心地の良い晴れ空の日、彼は正装―おなじみの小綺麗なスーツ―でもって往来に出た。気晴らしの散歩というか、彼が…